事業譲渡とは、会社や個人事業が営んできた事業の全部または一部を、第三者に引き継ぐ取引を指します。
株式譲渡とは異なり、法人格そのものは変わらず、契約・資産・許認可・従業員などを個別に移転する点が特徴です。

特に建設業では、許可・実績・人の引継ぎが複雑になりやすく、慎重な検討が必要になります。


事業譲渡で特に注意すべきポイント

1.許認可は自動では引き継がれない

事業譲渡では、建設業許可は原則として承継されません。
譲受側は、あらためて建設業許可を取得する必要があり、次の点を事前に確認しておくことが重要です。

  • 経営業務管理責任者の要件を満たせるか
  • 専任技術者を確保できるか
  • 財産的基礎・社会保険加入状況に問題がないか

「事業を買えばそのまま許可も使える」と誤解して進めると、工事ができない期間が発生するおそれがあります。


2.契約関係は個別に引き継ぐ必要がある

事業譲渡では、工事請負契約・下請契約・リース契約などは自動承継されません。
そのため、

  • 発注者の承諾が必要な契約はないか
  • 名義変更や再契約が必要な契約はどれか

を一つずつ整理する必要があります。
特に進行中工事がある場合、契約主体の変更が工事継続に影響しないかの確認は不可欠です。


3.従業員の引継ぎは同意が前提

従業員についても、事業譲渡では当然に引き継がれるわけではありません。
譲受側で雇用するには、従業員一人ひとりの同意が必要となります。

  • 雇用条件は維持されるのか
  • 社会保険の切替時期はいつか
  • 現場責任者や技術者が確保できるか

これらを整理せずに進めると、人材流出や現場停滞につながる可能性があります。


4.債務・リスクの切り分けを明確にする

事業譲渡では、どこまでを引き継ぎ、どこからを引き継がないのかを契約書で明確にします。

  • 未払金・借入金は誰が負担するのか
  • 瑕疵担保責任やクレーム対応はどうするのか
  • 過去工事に関する責任の範囲

を曖昧にしたまま進めると、譲渡後のトラブルに発展しやすくなります。


5.行政への事前相談は実務上ほぼ必須

事業譲渡を進めるにあたり、行政への事前相談は実務上ほぼ必須といえます。
書面上は要件を満たしているように見えても、最終的な判断は行政の運用に委ねられる部分が大きいためです。

特に次の点は、事前相談なしで進めるとリスクが高くなります。

  • 許可の廃業・新規申請のタイミング
  • 経営業務管理責任者・専任技術者の評価
  • 事業の同一性や継続性の判断
  • 工事ができない空白期間が生じないか

事業譲渡の条件を確定させる前、構想段階で相談することが重要です。
事前相談を行うことで、スキーム自体の見直しが必要かどうかも早期に判断できます。


6.スケジュール管理が重要

許可取得・契約切替・従業員対応には一定の時間がかかります。
そのため、事業譲渡では、

  • 許可申請までの準備期間
  • 事業開始のタイミング
  • 空白期間が発生しないか

といった全体スケジュールの設計が極めて重要です。


まとめ

事業譲渡は、事業の継続や拡大に有効な手段ですが、
**「引き継げるもの」と「引き継げないもの」**を正確に理解して進めなければなりません。

特に建設業では、許可・人・契約・責任、そして行政対応の整理が不十分だと、事業そのものが止まるリスクもあります。

形式的な手続きだけでなく、事前相談を含めた実務面の検討が不可欠です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。
内容は行政書士 吉田哲朗(行政書士吉田哲朗事務所 代表)が確認し、公開時点の法令・運用基準に基づき監修しています。
実際の申請要件や判断は、各行政庁の指導に従ってください。

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吉田哲朗
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